この物語の舞台は、北九州市の児童養護施設「聖小崎ホーム」様です。ここでは、私たちみんなのピアノ協会が提供する学習プログラムを通じて、2人のお子さんがピアノに出会いました。小学校低学年のみーちゃんと中学生のむっちゃん、二人ともピアノ未経験者です。

むっちゃん・中学生の「もっと弾きたい」

中学生のむっちゃんは、一時期、不登校に。でも頑張ってそれを克服しました。今、勉強も頑張ってます。ブランクを埋めるべく放課後は宿題に取り組むなどキャッチアップに余念がありません。従って、なかなかピアノの練習まで手が回らないこともありますが、ピアノのレッスン後は「もっと弾きたい」と自ら進んで、自分の「好き」な曲を弾いてピアノを楽しんでいます。

実際のところ、この半年間で、むっちゃんはピアノ練習アプリに自分が好きな曲を何と97曲もお気に入り登録したのです。「自主的に取り組むことが苦手」だそうですが、いやいやそんなことないです、謙遜ということなんでしょう。

こうしてコツコツと練習を積み上げていった結果、当学習プログラムの基本Ⅱを6割ほど終えました。これは導入期の代表的なピアノ教本「バイエル上巻」が7割ほど終了したことに相当します。一般的に進捗が遅いお子さんの場合には1年以上はゆうにかかることを考えると、相当がんばったね!ということなんだと思います。

むっちゃんの頑張りは本人の努力はもちろん、そこに周囲の大人たちの見守りがあったからこそ頑張れた、と筆者は感じています。それは小学低学年のみーちゃんのエピソードを通じてさらに深く確信したのです。

みーちゃん・小学低学年のモアナと両手弾き

みーちゃんは、大きな声で自由に歌うのが大好きで、ピアノに興味を持ち、当プログラムにエントリーしました。レッスン中、椅子にじっと座っていることができず、練習曲でディズニー映画「モアナと伝説の海」の一節が出ると、「モアナ~」と叫ぶように歌いながら、部屋から抜け出し園庭を駆け回る闊達なお子さんです。

レッスンが進んでも、なかなか楽譜を覚えることができませんでしたが、そこは歌で養ったリズム感があってか、職員さんが「ピアノ弾いてみる?」と声をかけると、みーちゃん自身が「好き」な曲、例えばBTSのダイナマイトなどを弾いてみせるようになり、ついには両手で弾けるようになりました。その時の職員さんの驚きの声を忘れることができません。今ではみーちゃんはピアノが大好きになり、満面の笑みを浮かべ「楽しい」を連発しながら取り組んでいます。

『あの子は歌が上手』ピアノの先生が見つめる『あの子の輝き』

みーちゃんが当プログラムに参加した当時は特別支援教育(通称「にこにこ学級」)に通っていましたが、4月に進級した現在は、通常のクラスで学んでいます。中学生のむっちゃんは不登校を克服しました。そこに至るまでの道のりは、日々みーちゃんやむっちゃんに接している施設の職員さんたち、学校での学びを支える北九州市の先生や職員さんたちの揺るぎない見守りがあったからこそ、と私たちは深く感じています。

私たちみんなのピアノ協会も微力ながらこの見守りに参加させていただいております。施設さんには寄贈されたピアノが3台ありましたので、それらを活用する形で、ピアノ学習アプリとタブレット、ピアノの先生のレッスンをご提供しています。

そのピアノの先生に、「みーちゃんはどんなお子さんですか?」と聞いたところ、目を細めながら「あの子は歌が上手なんですよ」「あの子は私たちが気づかない細かいことまで気がつくんですよ」と次から次へと長所を並べ立てました。

こういう視点があってこその見守り。大人の見守りの中で、子どもの「好き」は育つのか、そして輝きを放つのか、と思い知ったのでした。

私たちみんなのピアノ協会は、これからもこのような温かい見守りの輪の中で、子どもたちの可能性を広げるお手伝いを続けていきたいと考えています。今後も、子どもの『好き』を育む活動にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

*この活動は、公益財団法人CBGMこども財団様の助成事業として行なっております。

【あわせて読む・関連記事】

私たちの活動をより深くご理解いただくための関連記事です。

受益者の声・ストーリー
北九州の施設で花開いたピアノの音色:大人たちの温かい見守りが育んだ、子どもたちの『好き』と『輝き』New!!
受益者の声・ストーリー
「楽器の街」浜松市の施設で暮らす子どもの底力!
受益者の声・ストーリー
沼津の施設の子どもたち、3人3様のピアノ体験