ピアノは何かと高い(お金の問題)
ピアノ学習は「教室・教師」と「自宅・自習」の両輪です。例えば、週に1回、教室で30分のレッスンを受けて、次回までに自宅で復習や予習。このため「続くかどうかわからない」初期の段階で、高価で場所をとるピアノの購入が必要となります。
また、ピアノ教室のレッスン代も決して安くはありません。例えば毎週(月に4回)レッスンをすると、地方の相場はひと月あたり1万円前後、都心であればゆうに2万円かかります。
教育業界大手のベネッセ調査によると、月謝の平均値が1万6千円です。習い事の中には学習塾も含まれていたり、2つ以上の習い事をしている児童が全体の約半数を超えることから勘案すると、ピアノはとてもハードルが高い習い事であると言えるでしょう。(2024年度版・小学生に人気の習いごとランキング )。
なお、この調査によると、小学生で有料の習い事をしているのは全体の約7割と言いますから、約3割の小学生にとって、高価なピアノを用意して、安くはない月謝を支払うピアノ学習は「手の届かない」別世界の事象と捉えているのかもしれません。
もう一つ、ピアノ学習の課題を挙げましょう。
練習が辛い、つまらない
一般的にピアノ学習の教材でつかわれる練習曲は「単調」「つまらない」というのが相場です。例えば、日本で定番の「バイエル」はハ短調の練習曲が延々と続くと不評です。
以下は日本のピアノ指導者の団体ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)が毎年、発表している練習曲演奏ランキングですが、やはりこの傾向がみてとれます。(参照先:2023年度版ステップ課題曲演奏ランキング詳細)
海外の民謡やピアノ練習用に作曲された曲ばかり。そもそも子供にとって知らない曲ばかりです。当然のこととして、子供の興味を惹きつける、子供が好きな曲(例えばディズニーやBTS、米津玄師の曲など)は一つもないというのが実情です。
また、ピアノは両手で弾くものなのに、左手の練習を開始する時期が遅かったり、黒鍵盤を使うのも遅いなどの、習熟に時間がかかるというメソッド自体の非効率さも問題と言えるでしょう。
ここで興味深い調査結果を紹介しましょう。
2021年に教育養成系大学の学生に対して行われた調査です。全体のうち約54パーセントがピアノ学習経験があり、そのうちの約80パーセントが途中でやめたと回答した中で着目すべきは以下の2つです。
- ピアノ学習で嫌なこと:1位が「練習」60%、2位が教師で7%
- ピアノ中断の理由:1位が忙しい(学校や受験)。2位が「練習」
やはり「練習」に課題があると言えるでしょう。また、経験者のうち約7割がピアノ学習を再開したいという希望をもつ中で、今後弾いてみたい曲は以下のとおりです。
- クラシック約35%、ポップス約65%
教員養成系の大学生なので、アカデミックな視点からクラシック曲を弾いてみたいという回答が多数を占めると思いきや、なんとポップスが3分の2を占めているのです。(出典「生涯音楽学習の視点から見たピアノ学習の状況」2021年・唐津美和)
” 辛くつまらないものに、高いお金を払っている “ という摩訶不思議な現象が長期間にわたって延々と続いているのが、ピアノ学習の負の一面を示していると言えるのではないでしょうか。